台湾独立建国連盟主席 黄昭堂氏講演会レポート

 8月26日、東京都文京区の文京区民センターで、アジア安保フォーラムと財団法人台湾安保協会主催の講演会が開催された。講演者は台湾独立建国連盟主席の黄昭堂氏、演題は「台湾の総統選挙について」。会場は約200名の聴衆で埋まった。以下に講演内容を要約する。

 黄氏は民主主義は素晴らしいものと認識し、特に選挙を非常に重視している。
とはいえ、台湾の選挙は他の世界の民主主義国家と異なる特徴があるようだ。西暦2000年以降の台湾における行政と立法のねじれ現象は、確かに台湾の有権者の民意を代表していると黄氏は考えている。
 

講演者の黄昭堂先生

台湾ではいまだに国民党の選挙基盤は強固である。地方の隅々にいたるまで国民党の影響力が浸透している。また、国民党の資金力も豊富である。日本統治終了後の資産を国民党が独占的に没収したことから、一時期国民党の資産は6兆円とまで言われた。現在では2000億円ほどと言われているが、国民党の財務状況は最高幹部しか知らないほど不透明である。李登輝氏でさえ、副総統時代は知らされず、総統になって初めて国民党の資産の実態を知ったという。
 立法委員選挙では国民党は一人の候補者に5千万元、激戦区では1億元の手当てを支給し、総額50億元を費やすという。それでも国民党の資金力からすればたいしたものではない。
 台湾は民主化を遂げてからまだ20年程度であり、まだまだ未成熟である。それでもかつては票を買収しようとすれば100%可能であったのが、今では金で買収できる票は20%ほどになったと言われている。台湾の選挙も少しずつ良くなっているようだ。
 選挙結果には有権者の知恵が働いていると黄氏は考えている。今まで独裁政権への反対を繰り返してきた民主派政党がいきなり予期せぬ結果で政権を獲得したところで、人材が追いつかなくなってしまう。政治を行うためにはさまざまなことを勉強しなければならないが、行政経験のない者が政治家になっても何をすればいいのか、国会で何を答弁すればよいのかわからない。
台湾におけるホーロー人、客家人、外省人、原住民という族郡意識は今でもあるものの、少しずつ薄れつつある。もともと族郡対立というものは蒋介石独裁時代に外省人エリートが特権を振りかざしていたことから生じたものだが、今はそのような時代でもない。外省人でも3世ぐらいになると台湾人意識が強まってくる。象徴的なのは、蒋介石の曾孫である蒋友柏が、私は台湾人であると発言したことであろう。
 また、台湾政治大学の調査によると、「私は台湾人であって中国人ではない」
と答えるものが61%、それに対し、「私は中国人であって台湾人ではない」というものは5%に過ぎない。李登輝政権下の12年で台湾人の意識は徐々に変化し、特に陳水扁政権下の7年で台湾人意識は急カーブで上昇した。陳水扁政権には独立派からも何かと批判も多いが、陳水扁政権及び民進党の最大の欠点は自らの成果のアピールが下手ということがあろう。
 2008年の総統選挙では民進党から謝長廷が総統候補、蘇貞昌が副総統候補で立候補することが決まっている。それに対し、国民党からは馬英九が総統候補、蕭萬長が副総統候補で立候補する。蕭萬長は台湾人であり、経済財政の専門家でもあり、それなりに評価は高いが、馬英九は香港生まれであり、彼の長所といえばルックスがいいことぐらいしかない。
謝長廷は8年間の高雄市長時代に高雄市の建設に大きな成果を残したが、馬英九は8年間の台北市長時代にろくに成果を残せなかった。国政でも謝長廷は行政院長を経験しているが、馬英九は法務部長を経験しているに過ぎない。行政手腕では謝長廷のほうがはるかに勝っている。また、馬英九は汚職疑惑で起訴までされている。これに対する国民党の対応は支離滅裂そのもので、もともと汚職で起訴されたら選挙に立候補できないという党内規約があったにもかかわらず、馬英九が起訴されたとたん、その規約を改正してしまった。また馬英九自身も、選挙で当選して無実を証明すると発言するとんちんかんぶりである。

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10分間の休憩の後の質疑応答では聴衆から様々な質問が飛び出した。そのうちいくつかを紹介しよう。

質疑応答の場面。若い世代の台湾人で独立に興味がない人が多いのはなぜかと質問。

・2004年の総統選挙では台湾を選ぶか中国を選ぶかが明確な争点となっていたが、2008年の選挙では何が争点となるかという質問に対し、黄氏は謝長廷も馬英九も統独問題を避け、社会建設や経済建設を訴えたいと考えているが、国民党の綱領で終局的に統一を目指すと書かれていることを民進党側から追求される可能性が高く、謝長廷側も、統独問題について支持者から追及されるだろうから、今回の総統選挙でも統独問題は重要な争点になるとの見方を示した。
・台湾人の多くはなぜか中国にあこがれを持っているように感じるのだがそれはなぜかという質問に対し、黄氏はそれは誤解ですと明確に否定。今台湾人は金儲けに精を出しているので、たくさんの台湾企業が中国に進出し、100万人が中国に駐在する状況となっているが、彼らの多くは中国に好感を持っておらず、台湾人意識も強いことを強調した。また、台湾在住の台湾人の間でも中国に対する不信感が非常に強いことを指摘した。
・台湾人の友人では独立か統一かに無関心な人が多いがなぜなのかという質問に対しては、今の若い人は台湾はすでに独立国家だと思っているという見解を述べ、世論調査では30歳以下の台湾意識が40代、50代よりも高いことを指摘している。
 副総統候補に葉菊蘭ではなく、蘇貞昌がえらばれたことの違いはなにかとの質問に対し、黄氏は選挙に勝つためには蘇貞昌のほうが有利であることを指摘した。さらに政治における政策や理念はどうなるのかと問われると、謝長廷、蘇貞昌、葉菊蘭いずれも立派な理念、政策を持っていると述べた。

 2時間半に及んだ講演会と質疑応答は、最後に盛大な拍手で締めくくられた

 

200人の聴衆で埋まった会場

 

     

 

 

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