李登輝訪日問題から見えてくること


台湾の前総統李登輝氏は総統時代から今日に至るまで何度も訪日ビザを申請していながら日本政府はほとんど断るという非情な態度をとっている。ただ一回だけ、2001年の4月に心臓病の治療目的で来日したときのみ、日本政府はビザを発行した。だがつい最近も李登輝氏は2004年9月後半に観光目的で日本を訪問したいとの意向であったが、政府は年内のビザ発給を見送っている。来年以降であれば認める方針だそうだが、本当に約束が守られるかどうか不透明である。
理由は言うまでもなく、中国政府の暴力的とも言える内政干渉に、日本政府がおびえきって中国にさからえないからである。だがこれほどまでに過激な内政干渉などほかにあろうか。もちろん中国の日本に対するまるで植民地宗主国のような内政干渉はほかにもいろいろある。例えば中国が創作した物語を「歴史」として日本人に押し付ける行為や、靖国神社参拝を「やめなさい」と「厳命」したり、日本の首相が何度も何度も謝罪をしても「謝罪をしていない」などと事実を否定したり、日本固有の領土である尖閣諸島を中国の領土だと主張したりなどなど。これらのうち、尖閣諸島問題を除いては、日本国内の売国マスコミや売国派一般人にも呼応する人がいる事柄である。だが、李登輝訪日問題で、李登輝を日本に入れるべきではないと考える日本人がいったいどの程度いるのだろうか。少しはいるのかもしれないが、ごくわずかであろう。
 どう考えても日本政府が李登輝氏の訪日を断らなければならない理由は見当たらない。李登輝氏はテロリストではない。中国でテロ活動を行っている過激派グループのリーダーではない。もしこのような人物であれば日本政府が入国を拒否するのも正当性があろう(ただ実際のところ、中国のような残虐な独裁政権にテロ活動を行っている場合、そのテロ活動も充分正当性があるのだが)。もちろん暴力団でもなければ、麻薬密売組織の一員でもない。それどころか李登輝氏は台湾を国民党独裁から民主化へと導いた英雄である。李登輝氏の偉業は語りつくせぬほどであり、このような人物は日本から進んで招待すべきである。中国が好きな人でも、日本が昔中国に悪いことをしたとの贖罪意識に駆られている人も、首相の靖国参拝に反対する人も、さすがに李登輝氏の訪日には反対しないであろう。
 だが中国政府の態度は極めて強行で過激で猛烈である。李登輝氏が公職を引退してからも中国政府の態度は何ら変化がない。なぜなのだろうか。「台湾独立運動をしているから」というのは確かだが、台湾で独立運動をしている人物は数限りない。「元総統だから」ということだけではきちんとした説明ではない。私がここで説明しなくともすでに理解している方は多いと思うが、李登輝氏は日本人の間で絶大な人気がある。みんなご存知であると思うが、李登輝氏は親日家であり、日本語も巧みで、日本植民地時代も客観的に高く評価しており、日本文化に敬愛の念を持ち、日本で出版されている著作もある。李氏が訪日すれば数多くの日本人が歓迎することであろう。つまり李登輝氏は日本人で絶大なまでの影響力を有しているのである。李登輝氏が訪日して、様々な発言を行えば、日本の世論を大きく変える可能性もあるのだ。
 それに比べて中国のほうはどうだろう。中国に李登輝氏ほど日本で尊敬され、人気のある人物などいるだろうか。歴史上の人物であれば孔子、諸葛孔明、李白、杜甫、魯迅などなど日本でも深く尊敬されている人物は少なくない。だがもちろん中国の歴史上の人物は今ここでは全く関係ない。果たして現代の中国ではどうだろうか。江沢民、李鵬など日本でのイメージは非常に悪い。江沢民などは98年に来日したときはどこで演説しても歴史認識問題ばかりで、「謝罪せよ」を連発していた。そのほか朱容基、胡錦濤、温家宝などもとてもとても李登輝氏の人気には及ばない。芸能人、文化人、ジャーナリストなどを見ても日本で影響力のありそうな中国人はほどんどいない。不思議なことに、日本で活躍する台湾の芸能人は以前から多かったのに、中国人はごくわずかなのはなぜだろうか(とはいっても去年あたりから官製グループの女子十二楽坊が活躍しているが)。ジャーナリスト・言論関係でも多くの台湾人が日本で本を出版したりテレビに出演したりしているのに、中国人では滅多にいない。ジャーナリストではモー・バンフなどもいるが、素人の私から見ても彼の論述は素人で見方が浅く、知識が少ない。つい最近書店で彼の本を立ち読みしたが、あまりにも内容の質が悪くて、とても買う気にはなれないし、図書館で借りて最後まで読もうという気にもならなかった。
 これでわかるとおり、現代中国では日本人から尊敬されている人物がいないのだ。いくら胡錦濤が日本を訪問して、台湾が統一できるよう日本人に対して理解を求め、それがテレビで放送されようとも、日本人にとってはほとんど印象に残らないであろう。だが李登輝氏が訪日し、巧みな日本語で台湾に対する理解を求め、それがテレビで放送されれば多くの日本人の心が動かされるに違いない。
 どう考えても中国政府が日本政府に対して李登輝訪日を拒否するよう厳命するのも、日本政府がそれに従うのもいかなる正当性も見当たらない。常識的に考えれば、中国政府が李登輝氏に対抗したければ、中国側も特定の人物を日本に送って、中国の立場を理解してもらえるよう日本の民衆に訴えるべきである。日本は中国と違って言論の自由がある国である。中国の要人が日本を訪れて自由に中国の主張を述べればよい。賛同してくれる日本人がどれほどいるかわからないが、妨害するものはほとんどいないであろう。ただし先ほども述べたとおり、中国の場合、誰を日本に送り込んでも影響力はたかが知れているので、徒労に終わるだけである。中国政府もそれはわかっている。
 もちろんこれは中国自身が悪い。中国の対日政策にはいろいろな矛盾がある。中国に三年間生活した経験のある私にとっては中国には政治、経済、社会、などなど全てが全て矛盾だらけで矛盾のない分野など見当たらないのだが、対日政策も基本的には大きな矛盾を抱えている。中国の基本的な対日政策とは、経済的には日本と密接な関係を持つが、それ以外の分野では徹底した反日的政策をとることにある。これについてはここでいちいち述べなくてもよかろう。だが世界中の国々とは日本と中国の二カ国だけではない。時には中国とほかの国が対立しているときに日本の支持を得る必要がある場合もある。この点で中国の対日政策は完全に失敗している。今でも中国が好きな日本人は数多いが、それと同じぐらい反中の日本人が増えてしまった。台中両国間の問題で、無関心、中立などという日本人も多いが、中国に味方する日本人は極めてごくわずかであろう。中国政府は日本の世論を味方につけることに完全に失敗してしまった。
 メールマガジン「台湾の声」などを見ると、日本の政府、マスコミ、その他世間一般は、台湾を中国の一部と認識しており、断固として抗議しなければならない、との論調がよく見られる。これは確かにそうで、日本製の世界地図では台湾が中国の一部となっているし、テレビや新聞で中国地図がでても台湾が含まれている。日本政府も台湾を国家としては認めていない。
 日本はそれほどまでに台湾に非情な態度をとっているのだろうか。確かに非情といえば非情かもしれない。私も日本人として情けないと思うときが良くある。だがよくよく考えてみると、地図上で台湾を中国の一部にするかどうかなど、これらは一般的に表面的な事柄ばかりである。もちろんこれは国家主権にかかわることで、台湾に対して耐え難いほどの屈辱であることは理解できるが、実際には日本は台湾に対して必ずしも中国側の主張どおりにしているとは限らない。日本の大新聞は朝日新聞でさえ李登輝氏の訪日には反対していない。それどころか、確かに朝日の論調は極めて中国よりであるが、台湾が一国二制度を受け入れて統一すべしなどとは言っていない。ふだんは中国よりのマスコミも評論家も、台湾問題に関しては中国の意向にそった言論をしていない。それはそうだろう。台湾は民主主義国家、中国は時代遅れの共産党封建独裁。台湾は親日、中国は反日、一般世論も中国よりも台湾が好きという現状では「台湾は一国二制度を受け入れるべき」などという支離滅裂な論調はできないであろう。どちらかというと日本の大手マスコミは台湾問題については、中国の意向に沿った主張をするとあまりにも支離滅裂で世論の反発を受ける可能性があるし、かといって正しい論調をすれば中国からの激しい反発が来る恐れがある。だからなるべく台湾については事実を淡々と述べるだけの差し障りのない報道に留めておいて、深く突っ込んだ議論はしないといったところだろう。
 さてさて、いろいろ述べたが、民主主義的な価値観から考えれば李登輝氏はいつでも好きなときに自由に日本を訪れる権利がある。年に三回でも四回でも五回でもいい。月に一回、年間十二回訪れてもいい。李登輝氏はすでに82歳である。大変失礼だが、十年後、李登輝氏が健康を維持されているかどうかはわからない。そう考えると日台両国の深い絆となっている李登輝氏には何が何でも日本を訪問していただきたい。思う存分日本を観光して欲しい。
 李氏のような親日家が自由に日本に来られないというのは日本にとっても大きな損害であり、不幸なことである。これには右も左も親中も反中も関係ないのではないか。左翼的な日本人でも日本の伝統文化に深い敬愛を持っている人は多い。そのようなサヨクの方にもぜひとも李登輝氏訪日を歓迎してもらいたいものである。
 だいぶ終わりに近いが、話はまだ終わっていない。基本的に全ての台湾人は自由に日本を訪れる権利を有するはずである。私は早急に現状を変えよと言うつもりはない。明日、すぐにでも日本政府は台湾と国交を樹立せよなどとは言わない。日台国交樹立のためにはまず台湾のほうがやらなければならないことが多すぎる。かといって日本政府が台湾のために何もしないのも断じて許せない。日本政府は李登輝氏にとどまらず、陳水扁総統の訪日も受け入れるべきである。それがあまりにも性急過ぎるというなら、台湾の閣僚級の人物を入れ、行政院長をいれ、副総統をいれ、総統をいれるというように、順番に地位の高い人物を日本に入国させればよい。私は早急な変化を求めるわけではないが、かといって何も変化がないのも我慢ならない。日本政府は中国に対して毅然とした態度をとり、台湾政府要人の訪日を自由化すべきである。
 こうなるとさらに忘れてはならないのは、チベットの国家元首であるダライ・ラマ14世の存在であろう。幸い、ダライ・ラマ14世は中国の執拗な抗議にも関わらず何度も訪日している。韓国が一度もダライ・ラマ14世の訪韓を認めていないのと比べればはるかにましであるが、日本政府はダライ・ラマ14世訪日の際に、政治活動をしないなどという規制を撤廃すべきである。それからマスコミにはもっとダライ・ラマ14世に注目してほしい。

 

  

 

 

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