各紙の社説の分析

 台湾共和国建国を応援する我々にとってがっかりな結果となった今回の選挙。そろそろ「熱気」も冷めようとしているが、ここで各紙の社説を分析してみよう。産経新聞は選挙の翌日の12月12日にさっそく社説で取り上げている。13日の月曜日は各誌とも休刊日。読売、朝日、毎日、日経が取り上げたのは14日の火曜日であった。ちなみに各紙の社説を全て見たい方はこちらをクリックしていただきたい。
 また、前もって留意しておくべきこととしては、基本的に外国の選挙なので、しかも独裁国家とか戦争中の国家ではないので、発行部数数百万部を誇るこれら全国紙では台湾の特定の勢力を応援することはありえないこと。また、普段は媚中的傾向の強いわが国のマスコミだが、台湾問題に関しては、中立的傾向が見られること。もちろん地図を掲載するときに台湾が中国の一部とされているなどの媚中傾向はあるが、「台湾は一国二制度を受け入れるべき」などは朝日新聞でも言っていない。
まあとにかく大新聞は自らの本音を表に出せないのである。当サイトなどは明確に統一反対、台湾独立指示、台湾本土派政党(民進党、台湾団結連盟)支持を述べているが、大新聞ではそのようなことはできない。そこで、各紙の論調をことこまかく分析し、大新聞の「本音」を探ってみることとする。ではいくつかの視点から各紙の論調を比較してみよう


@タイトル
産経 台湾野党勝利 曲折をたどる民主化の道
読売 [台湾野党勝利]「中国は民意を読み違えるな」
朝日 台湾選挙――この踊り場を生かせ
毎日 台湾立法院選 民意は現状維持を選んだ
日経 中台の現状維持を選択した台湾選挙

産経によれば、野党の勝利によって民主化が曲折してしまったらしい。本土化、または独立が屈折したのならわかりやすいが、民主化が曲折してしまったというのだ。曲折という語自体が必ずしも悪い意味の単語ではないが、どことなく与党に勝利してほしかったような印象を受ける。
読売はかなりはっきりと述べている。「中国は民意を読み違えるな」、つまり台湾国民は決して統一など望んでいないのだぞ、という主張が読み取れる。実際に与党の得票率は5%伸び、野党は現状維持なのだから、読売の言うとおりである。
 朝日はタイトルを見ただけでは意味不明だが、踊り場というのは要するに独立でも統一でもない状態のことを表現しているらしい。毎日と日経は民意が現状維持を選んだことを社説のタイトルに掲げている。その主張は間違いではないかもしれないが、タイトルに掲げることによって、とにかく現状維持を強調しているわけだ。


A民意はどう考えているか。
産経 今回の選挙では、有権者は流れの方向は支持しつつも、その流れの速さにはブレーキをかけた格好となった。
読売 民意は確実に自立化に向かっている。
朝日 自立に向かうのはいいが、あまり急いで中国との緊張が高まるのも困る。今は安定と暮らしの豊かさが大事だ。  先週の台湾立法院選挙に表れた民意を一言で言えば、そうなるだろう。
毎日 台湾の有権者も民主化、台湾化の推進を支持していても、中台間の緊張が高まることは望んでいない。現状維持という民意が選挙結果に示された。
日経 選挙民は中台関係や内政の安定を求めた

産経と読売は台湾の自立化路線が確実に進んでいることを幾分強調しているのに対し、朝日、毎日、日経は現状維持を強調している。日経の「内政の安定を求めた」というのはちょっと的外れではないか。国会で野党が過半数を握っている「ねじれ現象」が到底内政の安定とは思えない。日経に言わせれば独立色の強い台連と統一色の強い親民党の両方が議席を減らしたことを根拠としているらしい。
興味深いのは読売と日経ではほぼ正反対の世論調査の結果を紹介していること。
読売 台湾・政治大学の意識調査では、現状維持派が多数を占めたが、中国との統一を望む住民は十年前の20%が今年は12%に減り、独立派は11%から19%に増え、逆転した。
日経 台湾行政院(政府)の世論調査では、中国との「統一でも独立でもない」現状の維持を望む意見が8割強を占め、早期の独立や統一を望む層は1けた台にすぎない。
ちなみに朝日新聞は、朝日新聞自身の「バランス」をとるためか「様々な世論調査を見ると、「自分は中国人」と思う人は80年代の末には50%を超えていたが、00年は10%台にまで落ち込んだ。逆に、「自分は台湾人」と考える人は80年代末では10%台だったのに、00年は30%台に達した。いまはこの傾向がもっと進んでいるだろう。」という台湾よりの世論調査の結果を紹介している。


B今後、台湾はどうすべきか。
産経 言及なし
読売 着実に進んできた台湾民主化の次の課題は、「和解と協力」の政治文化を築くことだ。
朝日 安定を求めた民意がつくった踊り場を生かして、双方の政権は途絶えたままの政治対話の再開に動いてもらいたい。
毎日 今後、陳政権には新憲法制定の見直しや中台対話の再開が課題となるだろう。
日経 今回の選挙で与党は台湾経済の再建や民生の向上をどう進めるかといった政策、ビジョンを欠いていた。与野党はこれらの重要問題に超党派で取り組むべきだ。
読売は主に内政面での「和解」を主張しているのに対し、朝日、毎日は中国との「対話」を主張している。常識的に考えれば中国は話し合いの通じる相手ではないので、読売の主張のほうがまとを得ているといえるだろう。

C中国への提言
産経 中国は、中国との協調を重視する野党連合が勝ったことで、陳総統の自立化路線が否定されたと主張するだろうが、台湾では野党も「愛台湾」をスローガンにし、民主主義を唱えている事実を見誤るべきではない。
読売 中国が、対中融和派の野党躍進を、陳政権揺さぶりの好機ととらえ、介入姿勢を強めれば、手痛いしっぺ返しを受けることになるだろう。
朝日、毎日、日経 言及なし。
これを見てわかることは、産経、読売は中国は台湾の民意を見誤るべきではないということに重点を置いている。つまり中国がどうすべきかを強調して述べている。それはそうだろう。なんといってもねじれ現象は解消されていないのだから台湾自身がどうすべきなのか、そう簡単に結論が出ない。それに対して朝日、毎日、日経はここぞとばかりに台湾が中国との対話を再開すべきことを強調している。そのかわり、中国に対する注文は一切見られない。
 しかしだからといってこれら三紙が中国にあまり目を向けていないわけではない。各社の社説で「中国」という語が何回使われているかを見ればわかる。ここからも朝日、毎日が中国との関係を重視していることがわかる。以下の通り、朝日、毎日は産経、読売の倍近い。
 産経5 読売6 朝日11 毎日10 日経5

D注目すべき表現
産経 与党陣営の民進党と台連の間で協調が乱れ、票の奪い合いも出るなど、
選挙戦術面での失敗があった。
 与党側が戦術面で失敗した(要するに候補者を立てすぎたために共倒れになった)ことを述べたのは産経だけである。これは敗因の全てではないとはいえ、重要な敗因である。他紙がこのことに一言も述べないとはどういうことだろう。また、台湾本土派の議席が1議席伸びていることに言及している新聞は毎日新聞のみ。得票率に言及した新聞はない。
毎日 2期目に入った陳水扁総統は05年の新憲法制定など
急進的な台湾自立化政策を進めようとしていたが…。
日経 中国や米国は
急進独立派の後退にひとまず安どしている。
毎日と日経は現在の台湾本土派政党を「
急進」という語を使って表現している。私から見ればこれら二紙のほうが急進的だと思うのだが。この日経の文にはほかにも大きな問題がある。中国と米国を同列に述べていること。中国はもちろん台湾を統一したいわけだが、米国は「独立に反対」とは述べても、「統一を支持する」などとは述べていない。アメリカは伝統的に「戦略的曖昧性」という政策があり、「独立を支持しない」という発言の奥には「台湾はすでに独立している」という考えが潜んでいると私は見ている。また、「後退」という語を使っているのは明らかに事実誤認であり、大新聞あるまじきことである。議席数は一つ増やし、得票率は5%増えているのだ。私の見方では「敗北」はしたが、「後退」はしていない。与党が後退したと述べたのは日経だけである。

Eまとめ
産経は選挙の翌日にさっそく社説を掲載するなど、感心の深さが窺える。また、産経、読売はそれぞれ台湾の民主主義、自立化路線が進展中であることを強調し、朝日、毎日、日経は民意が現状維持を選択したこと強調している。また、この三紙は台湾が中国との対話を再開するよう望んでいる。全体的にどの新聞も極端に偏った論調は見られないが、注意してみれば各紙に微妙な意見の差があることははっきりしている。また、台湾本土派の得票率が5%増え、中国派の得票率が横ばいであることに言及した新聞がないことにやや不満を感じざるを得ない。

 

     


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