世界情勢と密接に結びつく台湾

中国からの猛烈な妨害行為によって国際社会での孤立を余儀なくされている台湾であるが、実際のところ台湾は国際社会でそれほど孤立しているわけではない。台湾は世界情勢に深く関わっている。実際にアメリカでもオーストラリアでもヨーロッパでも台湾の知名度、認知度は韓国よりも高い。台湾はその特殊な政治状況により、常に世界のマスメディアから注目される存在となっている(だからといって今の状態が続いていいとは思わない)
言うまでもなく、台湾は世界第16位の経済大国である。インドよりもちょっと小さい程度の経済規模を持つ台湾の国際社会での存在感が小さいはずがない。台湾がどこかの国と国交を樹立したり、断行したりすると、相手は小国ばかりであるにも関わらず必ずといっていいほど新聞で取り上げられる。
一般的に台湾情勢に絡んでいる国は中国、アメリカ、日本などだが、遠く離れた地域と台湾情勢が深く絡んでくることもある。
1999年2月25日に国連安全保障理事会は、マケドニアに展開中の国連予防展開軍の駐留期限更新の決議案採択をおこなったが、中国が拒否権を発動した。理由は1月27日にマケドニアが台湾と国交を樹立していたからである。もちろんこれは中国の無責任で一方的な行動であって台湾には何ら責任はないが、台湾情勢が関わっていることは確かである。
 このような中国の妨害政策はWHO加盟への妨害や、ギリシャのアテネオリンピックで陳総統夫人が台湾選手団の団長をつとめていることに中国が圧力をかけてきた問題、アジアカップサッカーの日本が配布したパンフレットに中国と台湾が別々の色になっていることで中国のマスコミがブラジル人のジーコ監督に抗議した問題など、世界中のありとあらゆるところで行われていてきりがないくらいである。だが中国の台湾に対する孤立化政策は逆に台湾を世界中のメディアで目立たせ、台湾の国際社会での存在感を際立たせる結果となっている。
 そろそろ本題に入りたいが、一見台湾とは関係なさそうな問題が、実は台湾と深く関わっていることがある。これから述べるのはイラクやアフガンなどの中東情勢である。
 911同時多発テロをきっかけに、アメリカのブッシュ大統領はテロとの戦いに力を入れるようになった。一ヵ月後にアメリカはアフガニスタンに進攻し、タリバン政権を追い出した。その後、ブッシュはイラクのサダム・フセイン政権を国際社会に対する脅威とみなし、仏独露などの反対する中、それと同時に世界45カ国が支持する中で、2003年3月にイラクに進行した(台湾の陳水扁政権もアメリカの戦争を支持した)これら二つの戦争で、確かにアメリカはそのハイテク兵器の圧倒的優位によって圧勝したが、この二つの戦争でアメリカは莫大なお金をかけ、おかげでアメリカ経済は不況に陥った。その後、大幅減税によってアメリカは再び好況となったが、クリントン政権末期の30年ぶりの財政黒字から一転して、アメリカは第二次世界大戦後最悪の財政赤字に苦しんでいる。 フセイン政権を滅ぼした後も、さんざんテロに悩まされ、戦闘期間中を上回る米兵の死者を出した。
 イラク情勢をざっと振り返ってみて、台湾とは何ら関係がないように見える。しかしイラク戦争が始まったとき、これが自分たちと無関係ではないと悟った日本人や台湾人も少なからずいるはずだ。日本には北朝鮮という脅威があり、台湾には中国という脅威がある。しかし日本政府も台湾政府も弱腰で、テレビなどの主要メディアは売国派に牛耳られている。弱虫な両国にとって、アメリカに頼るしかないのが現状である。
 この一二年、アメリカは台湾を突き放したような発言が目立っていた。やはりアメリカは台湾を助けてくれないのか、と危惧した人も多いことであろう。ただ「台湾の声」でも指摘されている通り、2003年末にブッシュが「現状を一方的に変えるような行動に反対する」と発言し、陳政権の住民投票を牽制した際には、ブッシュは同時に陳政権に親書を送っており、「今はイラク情勢で手がいっぱいであり、決して台湾を見捨てたわけではない」と伝えたとされる。
1月30日にイラクで総選挙が行われた。いろいろ問題はあるものの、独裁政治が長く続いたイラクで今回行われた選挙はとりあえず成功と見なしていいであろう。私はイラク戦争の真っ最中はまだ中国に滞在していたが、インターネットにかじりついて戦争の様子を把握するようにしていた。だが実は、戦争終了後はイラク情勢に対する興味を失い、イラク情勢に関するニュースにあまり耳を傾けなくなっていた。私が専門分野としている台湾や中国とあまり関係ないと、私自身たかをくくっていたのである。今になって私は反省している。今回イラクで行われた選挙が台湾にとっていかに重要であるか、私は水を引っ掛けられたような思いである。
 最近、アメリカが再び台湾よりの政策をとりつつあることをお気づきの方も多いであろう。イラク問題が完全に解決したというわけではないが、民主的な選挙が実現したことによって、アメリカの負担は大幅に軽くなったはずだ。2月にはいるとエジプトのムバラク大統領が大統領選挙を従来の信任投票から複数候補による直接選挙に変更し、9月に実施すると発表した。レバノンでは、民衆のデモにより親シリア内閣が総辞職に追いこまれ、五月の総選挙へ向け、民主化を求める声がかつてなく高まっている。サウジアラビアでは建国以来初の地方評議会選挙が行われた。このように中東諸国の民主的改革が続いていく中で、アメリカは外交政策の重点を中東から東アジアに移そうとしている。東アジアには北朝鮮と中国というならず者国家がある。北朝鮮はずっと以前から世界最悪のならず者国家であったが、タリバン政権とサダム・フセイン政権が崩壊した今、東アジアは世界ワースト1位、2位のならず者国家が君臨する地域となってしまった。この二カ国がいかにならず者であるかをわざわざここで説明する必要はないであろう。しかもこの二カ国はアメリカを敵視している。当然アメリカが放っておくはずがない。アメリカはいよいよ東アジアに対する干渉を強め、影響力を及ぼそうとしているのだ。
 2月19日に日米両国は台湾を「共通の戦略目標」とする声明を発表した。表現は曖昧だが、日米両国が共同で台湾に関する声明を発表することは異例のことであり、意義は非常に大きい。アメリカは1979年に台湾と断行して以来、「戦略的曖昧性」という政策をとっており、いまいちアメリカの台湾政策はわかりにくい。ただ中国が台湾を武力行使したときは台湾を支援するというだけで、今後台湾政策をどのような方向に持っていくかはほとんど見えてこなかった。
だがそれもそうだろう。80年代は東西冷戦の真っ只中で、米ソの軍拡競争が激しかった時期である。ソ連東欧諸国の崩壊後も、朝鮮半島危機(幸い戦争は回避された)、イラク、ユーゴ、アフガン、イラクなどなどあちこちで問題山積み、さらにアメリカの最重要外交課題であるイスラエル・パレスチナ情勢にも手を焼いた。このような情勢下でアメリカの台湾政策は後出にまわってきたのだ。
 では2月19日に発表された「共通の戦略目標」とはどういう意味なのだろうか。ここから先は私の推測で述べさせていただく。今までアメリカの歴代政権は「台湾の独立を支持しない」等の発言を何度かしてきたが、これは決して統一を支持するという意味ではない。現にアメリカ政府が今まで明確に統一を支持する発言をしたことは皆無に近いのではないだろうか。アメリカが「独立を支持しない」という、いかにも台湾を冷たく突き放したような言い方ができるのは、台湾が事実上独立国家として機能しているという現実に基づいていると私は考えている。中国と極端に対立するのもアメリカにとっていろいろ面倒なことになるから「統一反対」とか「独立支持」といった明確な発言は避けてきた。アメリカとて何でもかんでも善意に基づいて外交を行うわけではなく、アメリカ自身の国益にかなうかどうかが重要なのだ。今後も明確な発言は避けるだろう。
実際のところ、アメリカは絶対に台湾を中国の統治下におきたくない。私はこれをアメリカの「正義」によるものとは考えない。アメリカ自身の国益による判断である。今後アメリカは少しずつ台湾の独立に加担する政策をとるであろう。以前から行っていた軍事支援を強化することのほかに、政府要人の交流も行われるだろう。さすがに国家元首の相互訪問は難しいだろうが、国務長官の訪台、行政院長の訪米ぐらいはできそうだ。実際には95年に当時総統であった李登輝氏が訪米した実績があるから、陳総統も通過ビザではなく、正式なビザでの訪米も実現するかもしれない。さらにアメリカ政府は、何かというと陳水扁政権に反対している台湾の野党に対してもロビー活動を強化するものとみられている。こうしたアメリカの台湾政策の強化に当たって、今後重要な役割を果たすことになる国が日本である。アメリカは日本に対してそれ相応の役割を担うよう求めてくるはずだ。それに日本は答える義務がある。憲法改正、集団的自衛権行使の容認は間違いなく中国にとっての脅威となる。中国国内では、無知な愚民たちの不満(さっさと武力行使をすればいいのに、そうすれば統一が実現するのにという不満)とはうらはらに、中国政府はもはや統一が不可能である現実を悟りながら、それを容認できずに焦燥にかられることであろう。
 アメリカの影響力は決して無視できない。アメリカはデンマーク領グリーンランドにも基地を置き、ベーリング海峡(アラスカとシベリア)のエスキモーでさえもアメリカの外交政策の影響を受けている。世界中でアメリカの影響力が及ばない地域など、南極ぐらいではなかろうか。台湾や中国に対する影響力も甚大である。
本来ならば台湾問題というのは、隣国である日本、さらには台湾自身がもっと毅然とした対応を取るべき問題だ。だがまことに残念なことに、これら両国は中国に対しては及び腰で、国益を害してでも中国との対立を避けようとしている。結果としてアメリカに頼らざるを得なくなる。
 私はどちらかというと親米派なのだが、今回はなるべく客観的に述べたつもりである。私はアメリカの外交政策はアメリカ自身の国益に基づいており、決して正義感に基づいたものではないと思っている。アメリカが戦争を行うときには「圧制からの解放」を大義名分の一つにしているが、911テロが起こるまで5年間タリバンを放置してきたし、「圧制からの解放」を大義名分とするなら北朝鮮とチベットを真っ先に解放すべきである。台湾問題に関しても、もし中国が台湾に武力侵略を開始したとき、本当にアメリカが軍事力を持って台湾を助けるかどうかはわからない。アメリカを信用しすぎるのは禁物である。日本も自らの国益に基づいてアメリカとの同盟関係を維持し、毅然とした態度で台湾政策に関わっていかなければならない。

 

     


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