日台医師連合シンポジウム参加リポート

 

 2006年1月15日、東京の市ヶ谷で開催された日本台湾医師連合主催の講演会に参加してきた。テーマは「彷徨う台湾人意識−12・3地方選挙の結果を受けて」
 講演者は博士課程で台湾語・台湾文化を専攻している多田恵(ただ・けい)氏と台湾総統府国策顧問の金美齢氏。最初に多田恵氏が講演する予定であったが、大学の都合で時間に間に合わず、金美齢が先に講演することとなり、司会者が金美齢氏を紹介しているところへ、多田恵氏が登場。予定通り多田氏から講演することとなった。
 多田氏はまず昨年末の台湾地方トリプル選挙で緑陣営が大敗した原因について10項目にわたる詳細な分析結果を述べられた。
 その後、多田氏が強調したことは、今民間の力が必要であるということ。国会で中国派の野党が過半数を握っている現状で、陳水扁総統のリーダーシップにはどうしても限界がある。となれば我々民間人がリードして、台湾の本土化、新憲法制定などを進めていかなければならないのである。
 先日台湾国内で行われた世論調査によると、台中関係の将来は台湾人自身が決めるべきと答えたのは89%にのぼり、最終的に中国との統一を望むと答えたのはわずか6%に留まったという。
 にもかかわらず、選挙では国民党支持が半数に達するという現状が続いている。国民党は蒋介石・経国の独裁政治により多くの人命を奪ってきたにもかかわらず、国民党による教育やメディアの影響で台湾人は不感症にかかっているとしか思えない。
 我々は強くなければならない。弱い人間は必ずなめられる。台湾は中国ではなく台湾であること、国民党は台湾の敵であることを強く主張し、運動を続け、台湾人意識を高めていかなければならないのである。
 
 続いて、金美齢氏の講演が始まった。
 金美齢氏は台湾で選挙があるたびに、多くの日本人を連れて視察に行く(台湾では外国人が台湾の選挙で特定の勢力を「応援」することは禁止されているが、「視察」することは許されているのだという)。だが昨年末の地方選挙では緑派が敗北することは予め予想できたことであった。さて、今回の選挙結果の台湾マスコミの報道の仕方は、各紙の報道姿勢が如実に現れている。中国寄りで有名な『中国時報』は"藍派が狂うほどの大勝利、緑派は惨敗"という見出しをつけたのに対し、台湾派で有名な自由時報は「人民は民進党に教訓を与えた」との見出しをつけた。
 民主主義には実は大いに厄介な側面があり、指導者が強固な意志を持って政策を進めていかないとおかしな方向に向ってしまう。昨年は民進党の汚職事件を中国寄りのマスコミが拡大に次ぐ拡大報道を続けた。国民党の汚職に比べればちっぽけであるにも関わらずである。汚職にまみれた国民党が平然としていられるのに対し、民進党が常にクリーンでいなければならないのは民進党の宿命と言えそうだ。
 中国人はもちろんのこと、例え台湾で生まれ育った人であっても、中華思想を持った人には何を言っても無駄である。今まで陳水扁政権がいくら宥和政策を遂行しようとしても全く無駄であった。これは日本の対中政策にも当てはまることであろう。
 もちろんこのことは台湾の中国派メディアにも言える。元旦に陳水扁総統の演説が行われていたが、台湾のメディアは陳総統に対する下品な罵詈雑言を浴びせ続けた。台湾メディアの醜態を目の当たりにし、金美麗氏は決心したという。金美麗氏は高らかな声で「私には陳水扁を監督する義務がある。それと同時に陳水扁を支持する義務もある。私はこれから陳水扁の悪口は言わないと決心しました」と発言した。その瞬間、会場に拍手が沸き起こった。
 中国人は謀略に長けている。台湾人はいとも簡単に中国人の策略に踊らされている。そして台湾人はおとなしく、弱腰である。選挙終了後の様子を見ればわかる。中国派は選挙で勝利を収めると派手に喜び狂うが、敗北したときは暴動を起こす。台湾派は選挙で勝利しても、敵を刺激すまいとおとなしくしているし、負ければ指を加えてみている。
 金美齢氏によれば、台湾人の植民地時代に植え付けられた二級市民としてのメンタリティを取り除かない限り、台湾国の建国は不可能とのこと。台湾人は、民主化を実現して十数年経過してもいまだに恐怖意識が消えず、私的な場でさえも政治的な発言ができずにいる。そして台湾人の多くは中国が戦争を起こすことを恐れている。だからなかなか台湾人意識を表に出すことができない。
 金美齢氏は時間の関係で詳細を述べなかったが、たとえ選挙で緑陣営が勝っても、憲法が変わっても、国名が変わっても戦争は絶対に起きないという(先日行われたチャンネル桜での鳥居民氏との対談に詳しい)。台湾人はもっと自身を持たなければならないのだ。だが台湾人が自信を持つためにはどうすればいいのか。ここはアメリカ、そして日本がもっとしっかりする必要がある。アメリカと日本は台湾の見方であり、台湾の安全を守るという決意を示すことが必要である。保守系言論界の重鎮である桜井よしこ氏も最近はさかんに日本も「台湾関係法」を制定すべきと主張している。もちろんこれは日本の国益にもかなうことだ。台湾が中国に吸収されてしまうと、それは台湾自身のみならず、日本にとっても大きな災厄をもたらすことになるのである。
 
 金美齢氏による約1時間弱の講演の後、質疑応答となった。「次期総理の有力候補である安倍晋三氏は台湾の味方となるでしょうか」との質問に対し、金美麗氏は「私がこの場で何か発言すると安倍さんへの票が減る心配があるのでちょっと言いにくいのですが、間違いなくなります」とユーモアを交えながら答えた。
 また、ある参加者からは「陳水扁総統の曖昧な態度が非常に腹立たしい」との発言に対し、金美齢氏は、世の中は単に原理原則だけで動くのではなく、様々な要素が複雑に絡み合って自分が直面する問題に対処していくのであって、そのような考え方は好ましくないと述べられた。さらに、2003年末に当時台北に駐在していた内田代表が総統府を訪問して住民投票に懸念を表明した件に関し、内田代表自身が非常に不本意と感じていることをパーティーの席上で述べられたという話もした。
 また台湾人のある老人が今後の台湾についての提案をし、「民進党のみに頼るのではなく、新しい台湾独立政党を作る必要がある。民進党、国民党隠れ本土派、台湾団結連盟、台湾独立建国連盟、その他の諸勢力が一致団結して来年はじめまでに新政党を結成し、李登輝氏が党首、もしくは顧問を勤める。そうしないと07年の立法議会選挙や08年の総統選挙に間に合わない」と述べられた。

 最後に日本台湾医師連合による声明文が発表され、講演会は終了した。
 在日台湾人は、在米台湾人よりもはるかに活躍し、それなりの成果を収めているし、日本人による台湾支持の活動もさかんである。しかし依然として台湾国建国には至っておらず、まだまだ足りないのが現状である。今後も我々は地道な努力を続けていく必要がある。一人一人が日本のため、台湾のために努力を続けることが重要であろう。

 

     


 

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