【書評】 『日本よ、こんな中国とつきあえるか?』

日台中3カ国を理解するための入門書としても最適

 日本における台湾独立運動の若手リーダーとして活躍してきた林建良氏のデビュー作『日本よ、こんな中国とつきあえるか?』は期待を全く裏切らない力作である。林建良氏は学生時代には国民党独裁政権による中国人化教育を受けた一方で、中国人化教育の弊害から抜け出し、台湾人としての誇りと愛国心を持つに至った。その両面性があるからこそ見えてくる中国の本質がこの著書には描かれている。また、臓器移植問題と中国肺炎SARSについては、医師ならではの経験と視点を活かした巧みな分析がなされている。
 著書出版記念祝賀会で林建良氏が短い講演を行ったとき、「中国の悪口を書いたものではなく、中国そのものを書いた」と述べていたが、全くその通りだと思う。特に後半部分の中国政府による人権侵害に対する糾弾は、林建良氏がそれを意図したものかどうかはわからないが、結果としては中国人民のためになるものである。
 この本の中では日本についても多くのページを割いている。林建良氏の日本観は日本に対する愛着と批判の両面がまじったバランスのとれたものだ。日本統治時代を経験した世代は、その後の腐敗しきった国民党独裁政権による苦難の反動もあって、日本時代に好意的で、日本の伝統や文化、日本人の勤勉で清潔で誠実な生活態度を高く評価する傾向がある。林建良氏も87年に来日以後の経験から日本人の様々な面を高く評価している。とはいっても日本や日本人を手放しで賛美しているわけではない。日本のアジア外交における偽善者ぶりや、日本の堕落した教育については手厳しく批判している。とはいっても中国共産党に洗脳された中国人や反日日本人による憎悪のこもった日本批判とは違い、林建良氏の日本批判は日本に対する愛情が込められたものであるがゆえに、読者の胸に重く響くと同時に、むしろ「よくぞ言ってくれた!」と感謝の気持ちも湧いてくる。
 そしてこの本では林建良氏の祖国台湾についても述べられている。台湾という国については、中国人はもちろんのこと、日本人、さらには台湾人自身でさえ誤解している部分が非常に多い。その理由は中国政府による悪質な事実の捏造とその宣伝があり、さらには反日媚中の日本人と連共反台の在台中国人が追随して、それぞれ日本国内、台湾国内で台湾に関する虚位の宣伝を行っているからだ。このように嘘だらけの情報が蔓延している中で、林建良氏は風穴を開けて台湾の真実を伝えようとしている。例えば多くの人々が、中国人と台湾人は血統的に同じ民族であると思い込んでいるが(恥ずかしい話だが、2年ほど前まで私もそう思っていた)、この本ではそれが虚構であることを、歴史学的、血液学的観点から見事に証明している。
 台湾で生まれ育ち、中国人化教育を受け、日本で20年近くを過ごした林建良氏の豊富な経験と多角的な視点に基づいた分析は普通の日本人にはなかなか真似できないものであろう。日本、台湾、中国の三カ国を理解するための入門書としても本書は最適だと思う。

林建良著 『日本よ、こんな中国とつきあえるか?』

 

 


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