書評 『大丈夫か日台関係』 台湾が疑いもなく国家であることを実証!

 

 本書は内田勝久氏が2002年〜2005年5月まで財団法人交流協会台北事務所の所長を務めた経験をもとに著したものである。
 日本人の中には台湾は国家ではないと誤認している人も少なくないであろう。そういう方にはぜひ本書を読んでいただきたい(もちろん台湾は国家であると確信している方にも読んでいただきたい)。交流協会は表向き民間団体であるが、実質的な内田氏の仕事は駐台大使以外の何ものでもなく、日本政府と台湾政府、日本国と台湾国との関係を取り持つことが内田氏の三年間の活動であった。内田氏の三年間の活動を見たとき、台湾が国家ではないなどという言葉のゲームが成り立つのであれば日本も中国もアメリカもタイもイタリアもブラジルも南アフリカも、世界中どこにも国家など存在しないことになってしまう。
 内田氏は大使という公的な立場もあり、政治的な立場、特に台湾国内の緑と青の対立に対しては中立的で、そもそも両者の激しい対立についてはそれほど強調して取り上げていない。また、台湾の将来に関わる問題についても、独立派のような強い主張はせずに「現実的な」対応が目立つ。
やはり大使という公的な立場上、その活動や発言には様々な制約もあるのであろう。とはいえ、あとがきでは「台湾の民意が強力な台湾アイデンティティーの下に結束し、疑いなく独立への展望を見据えている」とはっきり述べられている。
 内田氏が活躍した三年間、天皇誕生日レセプション、台湾人への勲章の授与、愛知万博開催期間中の台湾人へのビザ免除など、日台関係において様々な功績があったが、私がここで一つ注目したいのは2004年12月に実現した李登輝氏の観光旅行である。
 内田氏が李登輝氏の訪日を切に願い、努力してこられたことは本書を読めばよくわかる。だが李登輝氏の3年8ヶ月ぶりの訪日実現に至る経緯を読むと、複雑な思いがわいてくる。内田氏は李登輝氏は極力政治的な活動、というより政治的な発言を控えてもらい、なるべく中国政府を刺激しないようにするのが望ましいという考えである。日中関係が極度に悪化してしまうと、李登輝氏の次の訪日が、最悪の場合は今回(2004年12月)の訪日さえも中止に追い込まれてしまうかもしれない。次の訪日へつなげるためにも、中国政府につけいるすきを与えないようにしたいという方針である。内田氏の考えはある意味正論かもしれない。李登輝氏が日本滞在中に自らの政治理念を遠慮なく主張し、多くの日本人を喜ばせたところで、次の訪日の機会に再び日本政府から入国を拒否されるようなことになっては確かに逆効果だ。
 だが私は、2004年12月の訪日時は致し方ないにしても、このままでいいとは思わない。私は李登輝氏には何も遠慮することなく自らの思うがままに行動し、発言してほしいと思っている。これについてはまた別の機会に述べるが、一層のこと中国政府をもっと刺激してほしいとさえ思っているくらいだ。とはいっても李登輝氏訪日実現に至る内田氏の対応を非難するつもりはない。内田氏の3年間の活躍による日台関係の強化について詳しくはぜひ本書をお読みいただきたい。
 内田氏は退任後に李登輝友の会会員になられ、2005年9月には台湾研究フォーラムでの講演もされている。これからもぜひ日台両国間の関係強化のために活躍してもらいたい。

内田勝久著 『大丈夫か、日台関係』 産経新聞出版 ¥1800

 

     


 

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