(産経新聞より転載)
政権交代をかけた台湾の次期総統選は22日投開票される。選挙戦最終盤で起きた中国チベット自治区での騒乱などをめぐり与野党の論戦が激化。両陣営とも武力弾圧を批判する立場は同じだが、中国との「終局統一」を掲げて対中融和を目指す最大野党、中国国民党の馬英九候補(57)に対し、与党・民主進歩党の謝長廷候補(61)は、チベット独立支持を鮮明にし、国民党のあいまいな姿勢を攻撃している。ただ、チベット問題がどこまで投票行動に影響を与えるかは不透明だ。
民進党政権に対する失望感を背景に高い支持率に支えられ、これまで選挙戦を優位に進めてきた馬氏だが、チベット騒乱に加え、中国の温家宝首相が先の全国人民代表大会(全人代)終了後の記者会見で、馬氏が避けてきた「統一論議」に言及したことから一転して防戦に立たされている。
「『中華民国』が中国全土の正統政権」を唱えてきた国民党の従来路線に沿えば、チベットは中華民国の領土の一部となり、「チベット独立」を支持する民進党とは立場が異なる。馬氏は17日の会見で、中国の武力鎮圧を非難し、国際世論と協調する姿勢を打ち出したが、その後は「中華民国はチベット人の自治を認めたい」と補うなど、党の主張を貫く考えを微妙に盛り込んだ。
しかし、温首相は18日、追い打ちをかけるように「(台湾の将来は)台湾同胞を含む全中国人民によって決定される」と発言。馬氏は「統一論議」は棚上げとし、経済分野に絞って中台の協力強化による振興策を提唱してきたが、再び政治的な対中姿勢を問われる格好となり、苦しい立場に追い込まれた。
過去の総統選では、ミサイル演習や台湾の独立志向を激しく批判する朱鎔基首相(2000年当時)の発言が台湾人の結束を促し、独立派が勝利するという中国には皮肉な結果となった。
このため、謝陣営はチベット騒乱や温首相発言を「逆転勝利」の好機ととらえ、連日、一党独裁が生む中国の政治的脅威を際だたせ、チベット擁護の緊急集会を開催。謝氏は「チベットの今日は台湾の将来。馬氏が当選すれば台湾総統は軟弱化する」と攻勢を強め、中台の「共同市場構想」など対中融和を原動力に「台湾再生」を目指す馬氏をけん制する。
ただ、「台湾人意識」の高揚で危機感をあおり、支持拡大を図る民進党の選挙戦術は、有権者の政治離れを加速させる側面もあり、情勢は投票日まで予断を許さない。
投票は午後4時(日本時間同5時)に締め切られ、夜には大勢が判明する見通し。有権者数は約1730万人。
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